国民は議員を選べても、議員の採る政策を選べないのか? : 野中尚人『自民党政治の終わり』を読み終えて 2
<国民は自民党の政策を選択できないのか?>
旧郵政事業の政府保有株式のうち、金融部門の株式売却を凍結する、と いった動きが報道されている。
野党からは、郵政民営化を全面的に見直す凍結法案が出ているようで、当面はそれを軸に与野党で調整を進めていくらしい。
野中尚人『自民党政治の終わり』では、小泉内閣後、自民党内にかなり大きな政策路線上の対立が生じていることが指摘されている(P.106〜 108、198、210、211)。
たとえば、P.198では、その対立を、「旧来型の政治を守ろうとす る勢力」と「新自由主義的な政策へ進もうとするグループ」という、2つ のグループに分けている。
同様の路線対立に係る記述は、高橋洋一氏の著作や長谷川幸洋氏の著作にも見られるし、先の総裁選をみても、おそらくそうした実態があるのだろ う。
仮に、そうした大きな対立が自民党内に生じているとすれば、先の総裁選 挙のように、自民党総裁選挙は今後も「党内での政策路線選択の選挙」となるのだろうし、総裁の交代は「政策路線の転換」になってしまう可能性が高い。
そうなると、端的にいって、自民党に投票する場合には、そのマニフェス トを見ただけでは、国民はその政策を間違いなく選択することができなくなりそうだ。
今後、自民党のマニフェストは、正確を期すため、「党内情勢によって は、こうなるかもしれないし、逆にこうなるかもしれません」という形で提示した方が良いのではないだろうか。
<マニフェストはその時々の総裁の意見に合わせればいいのか?>
たとえ話でいえば、こういうことではないか。とある有権者が、或る自民党衆院候補が主張する政策、党のマニフェストに沿った政策に賛同して、その候補に投票したとする。
ところが、投票後1年経たないうちに、自民党総裁選挙があり、現総裁の政策に強く反対している政策グループ(野中本等によれば、政策路線の対立は必ずしも派閥ごとにはなっていない様子)の議員が総裁に当選した。
党としての政策の方向性は大きく変わることとなり、マニフェストも大きく変更され、前政権の実現した政策も、凍結ないし大幅な見直しが行われることとなった。総裁任期が3年、衆院議員任期が4年という点を考えても、今後、こういうことは、十分に起きうるはずだ。
現在の制度としては、上記のような路線変更は確かに許容されているかもしれない。
党としての政策の方向性は大きく変わることとなり、マニフェストも大きく変更され、前政権の実現した政策も、凍結ないし大幅な見直しが行われることとなった。総裁任期が3年、衆院議員任期が4年という点を考えても、今後、こういうことは、十分に起きうるはずだ。
現在の制度としては、上記のような路線変更は確かに許容されているかもしれない。
ただし、「裏切られた」「当てにならない」と受け止めるかなりの有権者が出てくることは、容易に予想できる。自民党への支持も不安定になるはず。では、なぜそうした動きが現に起きるのか?この辺りを、野中本の内容から類推してみたい。


