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水村美苗『日本語が亡びるとき』(書籍版)を読んで: 1 読み始め

昨晩から、『日本語が亡びるとき』書籍版を読み始めた。

<ざっと見ての感じ>
最初に探したジュンク堂池袋店では在庫切れだったけれど、近所の書店で 最後の1冊を入手できた。ネットでの評判の高さがこんなところにも反映 されているのだろうか。

1〜3章について『新潮』版との異同を確認した上で、4章以降をざっと 流し読み。この著作は、どうやら、語り手の「言語」体験を踏まえての 「日本近代文学への信仰告白」のようだ。

たとえば、国語・公用語政策が語られている部分は、日本語・英語へのア ンビバレントな感情がかなり露わになっていて、どこまで本気で、実現性 とか考慮されているのか、分からなかった。

もちろん、国の政策について、何を提案しても、それ自体全く問題はない と思う。

ただ、該当箇所は、真摯な政策提案というよりは、英語や日本語への複雑 な感情がむき出しになった呪詛を投げつけているように感じられた。呪詛 をそのまま政策にするのは難しいと思う。

ネットで見かけた、本書へのプラスの評判は、「好感を持った」という評 よりも「貴重な問題提起」という評が多いように思う。その点は確かに、 その通りかもしれない。


<『新潮』版との異同で気づいた点>
1〜3章には、末尾部分を除いて異同はなさそう。つまり、(私からみて の)いくつか細かい間違い(間違いでないというのなら、ミスリーディン グな書きぶり)はそのままになっている。もちろん著者なりの判断なのだ ろう。

また、『新潮』版3章末尾(P.208下段〜P.209)は、書籍版 と比較したところ、どうやら4章以降のあちこちからのダイジェストとし て構成されていたと考えてよさそうだ。

ただ、その中で、『新潮』版 P.209上段2〜5行目の『今、過去に 葬ったと思っていた<普遍語/現地語>という言葉の二重構造が再びむく むくと頭をもたげてきている。しかも、今回は、英語というたった一つの <普遍語>が、言葉の二重構造を世界全体に強いようとしている。』とい う部分は、昨晩探した限りでは見つけることができなかった。

『新潮』版を読んだ際、この部分は、本作の中で、語り手の意見・感覚が かなり鮮明に表明されている箇所だと思っていたのだけれど、なぜ削除さ れたのだろうか?

もちろん、この部分がなくても、本編全体を見るかぎり、語り手の主旨は この部分の趣旨と変わらないようには思えるけれど。


<どう読んでいくか?>
端的にいえば、本書は丁寧に読んでみたいと考えている。ネットの評判通 り、いろんな論点を抱えている本だと思うので、そうした論点を、これを 機会に勉強してみたい。

では、どう読んでいけばいいだろう?まず、「英語が支配しつつある」 「日本語が使われなくなる」といった語り手の問題意識を、本書に沿っ て、もう一度きちんと読み取ってみたい。

たとえば、私個人としては、日本中にマクドナルドがあるのを見て『アメ リカ帝国主義だ』と叫ぶ、といった主張には、現時点では賛成する気にな れない。

本書を読むのを機会に、言語帝国主義や多言語主義の文献を幾つか併せ読 んでみて、本書の語り手の議論を検討してみたい。

語り手の議論を敷衍すると、日本料理や着物も、もっと「保護」した方が 良いことにならないか?

それは、各人の文化上の選択に制限を加えることにならないか?どのよう な論理でそうした制限を加えようとするのか?気になるところだ。

実態のデータも、Webとか文献で探して確認してみたい。少し前 に、国連機関から関連する調査報告書が出ているみたいだ。

もう一つ、やや異なる角度になるけれど、個人的には、ネグリ/ハートの 「マルチチュード」というものには、それなりに期待している。

ところが、本書の語り手の議論では、マルチチュードが形成されつつある 現在の動き自体を止めるべき、ということになりそうだ。ざっと読んだだ けの『マルチチュード』をきっちり読んでみたい。

本書自体をどう評価するかは、上記のような検討をしてみてからにした い。

ただ、昨晩読んだ限りでは、まだ「ファンタジーの一種」という評価は変 わっていない。この分野には、もっと精密に書かれた文献がいくらでもあ ると思う。

本書は、そうした文献への入り口の1つ、ということになるのかもしれな い。

そんなことを期待しながら読んでみたい。

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